【初心者向け】COBOLデバッグ手法の基礎と実践テクニック

デバッガの利用

どれか一つだけ、というよりは状況に応じて使い分けるのが賢いやり方です。まずは手軽なDISPLAY文からマスターしていきましょう！

実践！COBOLデバッグ手法の基本【DISPLAY文の活用】

いよいよこの記事のメインテーマ、DISPLAY文を使ったデバッグ方法を見ていきましょう。

なぜDISPLAY文がデバッグに便利かというと、プログラムの実行中に「今、この変数はどんな値？」「ちゃんとこの処理を通ってる？」といったプログラム内部の状況を、外から覗き見できるからです。

使い方はとってもシンプル。プログラムの好きな場所に `DISPLAY` という命令を書くだけ。これだけで、指定した文字や変数の値を、プログラムを実行している画面（コンソール）などに出力できるんです。まるで、プログラムの中に小さなのぞき窓を作るようなイメージですね。

変数の値を確認するDISPLAY文の書き方

プログラムが計算間違いをしている時など、「この変数、途中でヘンな値になってないかな？」と確認したくなりますよね。そんな時にDISPLAY文が活躍します。基本的な書き方はこんな感じです。

DISPLAY '確認したいこと:', 変数名.

例えば、`WS-COUNT` という名前の変数の中身を見たいときは、こんな風に書きます。

IDENTIFICATION DIVISION.
PROGRAM-ID. DISPLAY-TEST.

DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 WS-COUNT   PIC 9(3) VALUE 10.
01 WS-NAME    PIC X(10) VALUE 'COBOL'.

PROCEDURE DIVISION.
    ADD 5 TO WS-COUNT.
    DISPLAY 'WS-COUNTの値:', WS-COUNT. 
    DISPLAY 'WS-NAMEの値:' WS-NAME.

    STOP RUN.

これを実行すると、画面にはこう表示されます。

WS-COUNTの値:015
WS-NAMEの値:COBOL

ポイントは、`PIC 9(3)` で定義した `WS-COUNT` の値が `015` と表示されている点です。桁数に合わせてゼロ埋めされて表示されるんですね。複数の変数を一度に表示することもできますよ。

DISPLAY 'カウント:', WS-COUNT, ' 名前:', WS-NAME.

こう書くと、1行で表示されて見やすいこともあります。

カウント:015 名前:COBOL

処理の通過点を確認するDISPLAY文の使い方

「あれ？ IF文の条件、どっちに入ってるんだろう？」「この繰り返し処理、ちゃんと最後まで回ってる？」プログラムの処理の流れが分からなくなることも、よくあります。

そんな時は、特定の処理の前後に目印となるDISPLAY文を入れてみましょう。

IDENTIFICATION DIVISION.
PROGRAM-ID. FLOW-CHECK.

DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 WS-FLAG   PIC 9 VALUE 1.
01 I         PIC 9 VALUE 0.

PROCEDURE DIVISION.
    DISPLAY 'プログラム開始'.

    IF WS-FLAG = 1 THEN
        DISPLAY 'IF文の条件TRUEに入りました'
        *> ここに条件が真の時の処理を書く
    ELSE
        DISPLAY 'IF文の条件FALSEに入りました'
        *> ここに条件が偽の時の処理を書く
    END-IF.

    DISPLAY 'IF文の後ろ'.

    PERFORM VARYING I FROM 1 BY 1 UNTIL I > 3
        DISPLAY 'PERFORM処理 ', I, '回目'
    END-PERFORM.

    DISPLAY 'プログラム終了'.
    STOP RUN.

これを実行すると、こんな風に出力されます。

プログラム開始
IF文の条件TRUEに入りました
IF文の後ろ
PERFORM処理 1回目
PERFORM処理 2回目
PERFORM処理 3回目
プログラム終了

どうでしょう？ この出力を見れば、IF文で条件が真（TRUE）の方の処理が実行され、PERFORM文がちゃんと3回繰り返されたことが一目瞭然ですね。

このように目印を置くことで、プログラムがどんな経路を辿って動いているのか、手に取るように分かるようになります。

COBOLデバッグ手法【DISPLAY文・応用テクニック】

DISPLAY文の基本的な使い方が分かったところで、もう少しだけ便利な使い方、応用テクニックを紹介しましょう。これを知っていると、デバッグ作業がもっとスムーズになりますよ。

デバッグ用出力と本番用出力を区別する工夫

デバッグのためにたくさんDISPLAY文を書いた後、デバッグが終わったら消すのが基本です。でも、うっかり消し忘れてしまうと、本番のシステムで不要なデバッグメッセージが出てしまって大変！

そうならないための工夫があります。

一つは、デバッグ用のDISPLAY文の行頭に `*` (アスタリスク) を付けてコメントアウトする方法です。

* DISPLAY 'デバッグ用: 変数A=', VAR-A.  *> デバッグが終わったらこのまま or 削除
    DISPLAY '本番用メッセージ'.

こうすれば、プログラムを実行しても `*` が付いた行は無視されるので、デバッグメッセージは出力されません。デバッグしたい時だけ `*` を外せばOK。もう一つは、デバッグモードかどうかを判断する変数（フラグ）を使う方法です。

DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 WS-DEBUG-MODE   PIC 9 VALUE 1. *> 1ならデバッグモード, 0なら本番モード

PROCEDURE DIVISION.
    IF WS-DEBUG-MODE = 1 THEN
        DISPLAY '[DEBUG] 処理X開始'
    END-IF.

プログラムの最初の方で `WS-DEBUG-MODE` の値を切り替えるだけで、全てのデバッグ用DISPLAY文の出力をまとめてオン/オフできるので便利です。

デバッグが終わったら `VALUE 0` に書き換えればOK。

大量出力時の工夫（識別子の追加など）

ループ処理の中で変数の値を確認しようとDISPLAY文を入れると、同じような出力がダーーーッと大量に出てきて、かえって分かりにくいことがあります。

例えば、こんな感じ。

001
002
003
...
100

これだと、何の数字なのか分かりませんよね。
そんな時は、何の値なのかを示す「識別子」を一緒に出力すると、ぐっと見やすくなります。

PERFORM VARYING IDX FROM 1 BY 1 UNTIL IDX > 100
    *> 何の処理をしているか、何の変数か分かるように書く
    DISPLAY 'ループIDX:', IDX, ' 計算結果WK:', WK-RESULT(IDX)
END-PERFORM.

出力結果

ループIDX:001 計算結果WK: ...
ループIDX:002 計算結果WK: ...
...
ループIDX:100 計算結果WK: ...

ひと手間加えるだけで、出力ログが格段に読みやすくなります。 大量の出力から目的の情報を見つけ出す時間を短縮できますよ。

その他のCOBOLデバッグ手法の概要

DISPLAY文はとっても便利ですが、万能ではありません。場面によっては、他のデバッグ方法の方が効率的なこともあります。

ここでは、DISPLAY文以外の代表的な手法について、簡単に触れておきましょう。「こういうのもあるんだな」くらいに知っておくと、いざという時に役立つかもしれません。

メモリダンプの活用

プログラムが予期せぬエラーで突然止まってしまうこと、これを「異常終了」や「アベンド(ABEND)」と言います。そんな時、コンピュータが「その瞬間の記憶（メモリの中身）」をファイルに出力してくれることがあります。これが「メモリダンプ」です。

ダンプファイルの中身は、正直言って、最初は暗号のように見えます…。数字とアルファベットの羅列で、どこで何が起きたのかを読み解くには、専門的な知識と経験が必要です。

しかし、エラー発生箇所の特定や、その時の変数の状態を知るための非常に有力な情報が含まれています。

熟練のCOBOL技術者は、このダンプを解析して、複雑なエラーの原因を突き止めるんですよ。もしアベンドに遭遇したら、まずはダンプが出力されているか確認してみましょう。

デバッガの利用

最近のCOBOL開発環境（パソコン上でCOBOL開発ができるソフトなど）には、「デバッガ」と呼ばれるデバッグ専用機能が付いていることが多いです。

デバッガを使うと、次のようなことができます。

• ブレークポイント設定
• プログラムの指定した行で、一時的に実行をストップさせる。
• ステップ実行
• プログラムを1行ずつ、ゆっくり実行させる。
• 変数監視
• 変数の値が、プログラムの実行に合わせてどう変化するかをリアルタイムで見る。

DISPLAY文をいちいち書かなくても、プログラムの動きをじっくり観察できるのがデバッガのいいところ。

特に複雑なロジックや、何度も繰り返す処理のデバッグでは、DISPLAY文より効率的な場合があります。 もし使える環境があるなら、試してみる価値は十分にありますよ！

COBOLデバッグ手法における注意点

さて、デバッグの方法が分かってきたところで、今度はデバッグ作業をする上での注意点です。

これを怠ると、せっかくバグを直したのに別の問題を引き起こしたり、デバッグに余計な時間がかかったりすることも…。転ばぬ先の杖として、しっかり覚えておきましょう！

デバッグ用コード（DISPLAY文など）の消し忘れ

これは本当に「あるある」なミスです！ デバッグのために追加したDISPLAY文や、一時的に処理を書き換えた部分を、修正が終わった後に消し忘れたり、元に戻し忘れたりしないように、細心の注意を払いましょう。

もしデバッグ用のコードが残ったまま本番環境で動いてしまうと…

• 関係ないメッセージが大量に出力されて、ログが見にくくなる。
• 処理速度が遅くなる可能性がある。
• 最悪の場合、意図しない動作を引き起こすことも…。

プログラムの修正が終わったら、必ず「デバッグ用に書いたコードは全部消したかな？」「一時的に変更した処理は元に戻したかな？」と指差し確認するくらいの気持ちでチェックする習慣をつけましょう。

コードレビュー（他の人に見てもらう）やテストも、こういうミスを防ぐのに役立ちます。

エラー箇所や原因の思い込みに注意

エラーが発生すると、「きっと原因はここだろう！」と早合点してしまうことがあります。もちろん、経験からくる勘が当たることもありますが、思い込みで突き進むと、本当の原因を見逃してしまい、解決まで遠回りになることがあります。

例えば、「計算結果がおかしいから、計算式の部分が間違っているはずだ」と思い込んで、そこばかり調べていたけど、実は計算に使う元のデータ（変数）の値が、もっと前の処理でおかしくなっていた…なんてことも。

エラーメッセージをしっかり読む、関係しそうな変数の値を順にDISPLAY文で追ってみるなど、面倒に思えても、客観的な事実に基づいて、冷静に、一歩ずつ原因を絞り込んでいく姿勢が、結局は解決への近道だったりします。焦らず、地道にいきましょう。

【まとめ】COBOLデバッグ手法を習得して開発効率を上げよう

お疲れ様でした！この記事では、COBOLデバッグの基本的な考え方から、特に初心者の方におすすめのDISPLAY文を使ったデバッグ手法、そして作業中の注意点まで解説してきました。

ポイントをまとめると…

• デバッグはプログラム開発に必須の工程！
• DISPLAY文は、変数の値や処理の流れを見るのに超便利！
• 識別子をつけたり、コメントアウトを活用したりすると、もっと効率的に！
• メモリダンプやデバッガという武器もある！
• デバッグコードの消し忘れや、原因の思い込みには要注意！

デバッグスキルは、COBOLプログラマーとして成長していく上で、避けては通れない道です。

最初は難しく感じるかもしれませんが、今回学んだことを実際に試していくうちに、必ずコツが掴めてきます。

エラーを解決できた時の達成感は、なかなかのものですよ！

さあ、まずは手元の簡単なプログラムで、DISPLAY文を一つ、試しに入れてみませんか？そこから、あなたのCOBOLデバッグマスターへの道が始まります！応援しています！

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